チッソ無罪論

水俣病の原因は本当に水銀か

 

      阿火根 克三(あかね かつぞう)

 

はじめに

 

  私は、東京駅の近くにある大型書店で、偶然ある本を二冊発見した。其れを読んで非常に驚いた事を今も覚えている。その本というのは、1983年に亡くなられた東京工業大学名誉教授で金属学者の桶谷繁雄氏(以後桶谷教授と呼ぶ)の書かれた『大新聞の虚像・実像』(日本教文社)1974 と『逆転!!人間の否定へ 安全・公害問題にみる無理解とエゴイズム』(千代田書房)1979 という二冊の本である。この本に書かれた内容は、真実性があり、また重要であるにもかかわらず、世間にほとんど知られていない。この事を非常に惜しいという気持ちが、40年以上続いてきた。この惜しいという気持ちの解消のために、この本を読んで私が感じた事を私なりに述べてみたい。

 

        熊本県の水俣病について

 

   1956年ごろ、手足のしびれ、言語や歩行の困難、難聴、精神障害を起こして、ひどい場合死亡するという病気が水俣地方に、主に漁民の間で多発した。当時、チッソ水俣工場で、酢酸の原料となるアセトアルデヒドを硫酸水銀を触媒として製造していたが、この硫酸水銀が水俣病の原因とされている。

  この硫酸水銀をウィキペディアで調べてみよう。硫酸水銀の毒性の項目に次のように書いてある。

【水俣病の原因物質メチル水銀の元になった物質である。工業排水にはメチル水銀ではなく硫酸水銀が含まれていたが、海水中で微生物などにより、毒性のはるかに強いメチル水銀に変化したとされる。】

  このウィキペディアに書かれている事は、左翼学者の願望であり、化学ではなくファンタジーである。

 もうひとつ、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の製造過程で無機水銀(金属水銀)が使用されていた。塩水を電解槽の中で電気分解するとナトリウム(金属ナトリウム)と塩素ガスに分離する。このナトリウムは水に触れると過激に反応し、危険である。水銀は金属を溶かす性質があり、この水銀とナトリウムの合金を直接、電解槽の中で作るのである。この合金(アマルガム)化することによって、水との反応が穏やかになり、このナトリウム合金に水を作用させると苛性ソーダができるのと同時に水素ガスが発生する。ここで使用されているのは、無機水銀であり、工場の廃液から流れ出るのは微量で、人的被害はないと思う。熊本大学医学部の研究班は紫外線などの作用で有機化する可能性が実証されたなどと言っていたが、ヘドロの中の微量な水銀に紫外線(太陽光線)があたって本当に有機化するのか。

 

 昭和四十年代頃まで、水俣病有機水銀説のほかに、タリウム説があったのだが、いつの間にか有機水銀説が定着して仕舞った。こうなった原因は、熊本大学医学部が行った猫による動物実験の結果発表が大きいと思う。私もいつとははっきり覚えていないが、何十年も前、テレビで見たのを今もはっきり覚えている。私は水俣市の生まれで、そこに十七歳まで生活していたことがある。水俣湾(百間港)近辺で狂い死にした猫を直接見た事はないが、人づてに聞いた話では、何か激しくのたうち回っている印象であった。ところが実験用の猫は、口から涎をたらし、動きが非常に緩慢であり、不気味さを醸し出す効果はあっても、百間港近辺の狂い死にした猫の症状とは、明らかに違っていた。

 例えば、200cc位のコップ一杯の量の塩を人や小動物の胃袋へ投入したら、どうなるか。おそらく数日で体に異常をきたすであろう。塩に限らず、水に溶けるどんな無機物や有機物も大量に人や小動物に経口投与し続ければ、異常をきたすのであり、それゆえ、水に溶けるどんな無機物や有機物も有害物質に、あるいは公害の原因にでっち上げる事ができるのである。

 私は、この実験用の猫に、当時の百間港で取れる魚介類に含まれる有機水銀の濃度の数千倍、ないし数万倍の有機水銀を餌に混ぜて投与し続けたのではないかと疑っているのだ。

こんないかがわしい実験で、水俣病の原因が有機水銀であることの証明になるのか。

 

 もう一つ疑問に思っている事がある。熊本大学の原田正純教授が発見したとされる胎児性水俣病(先天性水俣病)ことである。私は何十年も前に、テレビでこの胎児性水俣病の子供を見たことを今も覚えている。この子供の母親が暗い部屋の中でお風呂に入れているシーンだったと思う。私はその時、いろんな場所で見た先天性脳性麻痺による身体障害者に似ているなと思った。そのテレビ番組を見てから、数年たった時、この母親が普通の健康な子供を二人産んでいることを知り、ますます疑惑が深まったのだ。

 もし胎児性水俣病が医学上の真実なら、同じ環境下にあった母親から全員、胎児性水俣病の子供が生まれなければ、おかしいではないか。いや、健康な子供が生まれる直前までは、有機水銀の摂取量が少なかったのだと、言い訳が聞こえてきそうだが、今となっては確認のしようがない。それに、この原田という人も亡くなっており、真意を確認することもできない。

 この原田という人は、左翼学者の特質故に(革命を起こすには、世の中に不安や恐怖感が充満していた方がよい。不安や恐怖感を醸成するためには、いかようにでも真実をねじ曲げ、嘘をでっち上げてもよいと考える日本の極左や左翼独特の気質のことである。東京立正高校事件を日本最初の光化学スモッグであると称して、共産党系の研究員がでっち上げたが、これが典型的な例である)日本全国に生まれる重度の先天性脳性麻痺患者を胎児性水俣病という病名にでっち上げたと私は今でも思っている。それにこの原田という人は、梅毒患者を水俣病にでっち上げたことから見て、ペテン師、詐欺師の才能もあったようだ。

 

 水銀法によるアセトアルデヒドや苛性ソーダの製造は、チッソ(当時の新日本窒素肥料株式会社)だけが行っていたわけではない。日本全国、世界中の工場が同様の方法で製造していたのだ。それがなぜ水俣市のチッソに近い百間港周辺で被害者が発生したのか。これは、化学工場は関係がなく、水俣市だけの特殊な事情があったと考えるべきなのである。

 それでは、いったい何が水俣病の原因なのか。桶谷教授は断定はしておられないが、農薬である。

 昭和24年、熊本県葦北郡田浦町に住んでいた有志が甘夏みかんの栽培を始め、翌昭和25年から、出荷用の本格的な栽培が始まった。一本の接ぎ木から初めて、徐々に天草地方や宇城地域に広がり、当然水俣市でも栽培を始め、そのために大量の農薬が使用されるようになったのである。

 

 次のグラフを見てもらいたい。

                           

 これは、桶谷教授主催のミニコミ誌「月曜評論」誌上に、和田野 基博士が作成し、昭和54326日に掲載されたものである。

 このグラフを見て気づくことは、チッソ(当時の日本窒素肥料株式会社)は、アセトアルデヒドの製造を戦前の昭和8年から始めているが、昭和28年に被害者が発生するまで、ほぼ二十年間、一人も被害者を出していない事である。それに対して、農薬の使用が急激に増加し始めた直後に被害者が発生し、農薬の使用量が最大になった時に、被害者の数も最大になっていることである。

 先ほども述べたように、桶谷教授は断定はしておられないが、私は、水俣病の原因は農薬だと思う。

 今ではすっかり状況が変わって仕舞ったが、私が小学生だった頃、およそ60年前、百間港(水俣湾)の周りの山や、近くの小高い丘にビッシリ、甘夏ミカンやみかんの木が植えられていた事を今もはっきり覚えている。そのミカンやミカンの葉に付く害虫駆除のために撒かれた大量の農薬が、雨水とともにチッソの工場近くの排水口から流れだし、百間港の魚介類を汚染し、被害を発生させたのだと、今、私には想像できる。

 

   新潟県の水俣病について

 

 昭和39年から40年にかけて、新潟県阿賀野川の河口付近に住む住民の中に、水俣病類似の病人が多発しているのが観測された。この病気の原因は、この河口から約70キロ上流にある昭和電工鹿瀬工場が流したメチル水銀とされている。

 読者はこの70キロという距離が、実感できるだろうか。関東で例えるならば、青梅市近辺にある工場が多摩川の河口付近にだけ被害を与えた事になる。九州で例えるならば、日田市近辺にある工場が、筑後川の河口付近にだけ被害を与えた事になるのだ。昭和電工鹿瀬工場と河口まで間には一人も被害者はいないのである。

 こんな事が物理的に可能なのか。私は、あり得ないと思う。それゆえ、昭和電工と阿賀野川河口付近に発生した被害者とは無関係であり、昭和電工は無罪である思う。桶谷教授も同様の事を書いておられた。

 では一体何が本当の原因なのであろうか。桶谷教授は、これも断定はしておられないが、農薬である。なぜ農薬なのか、その説明をしようと思う。

 その前に、阿賀野川の河口付近に被害者が発見された昭和39年(1964年)に何が起こったかご存じだろうか。この年には、新潟地震が発生している。百科事典から引用しよう。

【1964年6月16日13時1分、新潟・山形両県をおそった、裏日本ではめずらしく大きな地震。震源地は新潟県粟島南方で、マグニチュード7.3、全壊家屋1960戸、半壊家屋6670戸を数えた。被害は特に昔の信濃川の川筋で、人工的に埋め立てられた地域に集中し、そこでは鉄筋コンクリートのアパートや鉄橋まで倒壊した。この軟弱地盤によるひどい震害と、堤防決壊による浸水被害は、新しい型の震災として、世間の注目を浴びた。】

 この地震が、水俣病類似の被害者を発生させる引き金になったのである。農薬がどう関係してくるのか、桶谷教授の著書から引用しよう。

【新潟地震によって倒壊した倉庫群が河口付近に存在したが、その倉庫には多量の農薬が貯蔵されていた。倒壊後の整備に、これら農薬を入れた莫大なビンや缶は、ブルドーザーにより踏みつぶされ、農薬は地中に浸み込んでしまった。これが雨水などにより海に流れ出し、かつ潮の状況よって河口付近にたまるということは、横浜国立大学の北川博士の指摘するように、十分あり得ることである。】

 それに付け加えるならば、私は、高濃度の農薬に汚染された地下水(井戸水)を飲んで、体を悪くした人がいたのではないかと考えている。

 

      反公害キャンペーンの目的について

 

 昭和45730日付の日本共産党が発行している赤旗に、次のような記事が載った。

【公害は日本とアメリカの独占資本こそがその元凶であり、これに積極的に協力した自民党政府の政治責任である。】

 この共産党のかけ声の下、日本のマスコミ各社が、ヒステリックで気違いじみた反公害キャンペーンを一斉に始めたが、このキャンペーンで狂奔したマスコミの目的は何であったろうか。公害をなくす事なのか。いや、私は違うと思う。究極の目的は、日本の共産化であるが、当面は、大企業にダメージをあたえ、資本主義経済を崩壊させる事、と同時に当時の自民党政権を倒す事が目的だったと思う。

 見方を変えるならば、反公害キャンペーンとは、社会主義経済を褒め、資本主義系を貶めたいという日本の極左や左翼の願望の発露であり、お祭りなのである。

 ところで、戦後に作られた奇妙な言葉、公害。この言葉にはどういう意味があるのか。企業の営業活動が原因で、不特定多数の人を病気にしたり、死に至らしめる事なのか。私にはよく分からない。水俣病やイタイイタイ病や四日市ぜん息は、公害らしいが、森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症中毒事件は、事件であって公害ではないらしい。また、曾て大手の新聞社は、活版印刷技術を使って新聞を印刷していた時、大量の鉛を何十年にも渡って、河川や海に流していたが、これも公害ではないらしい。更に、旧ソ連や中共で放射能汚染による大規模な人的被害があったが、これも公害ではないらしい。要するに、マスコミの海洋汚染やマスコミの大スポンサーになっている企業の加害行為は、公害ではないらしいのだ。左翼やその手先であるマスコミにとって、共産党独裁国家、社会主義国家には公害は存在しないらしい。

 私には、公害というこの言葉を聞くと、日本の極左や左翼という名の腐臭を感じて仕舞うのである。

「社会主義経済国家には公害がなく素晴らしい。資本主義経済国家には公害があり、悲惨である」。この政治プロパガンダが真実であるという事を大衆の頭に刷り込むため、日本のマスコミは、旧ソ連や中共の凄まじい公害の実態を隠蔽したまま、日本の公害の悲惨さや暗さを異常なまでに強調したのであった。

 

      おわりに

 

 よく遠洋で取れるマグロに何ppmの水銀が含まれているから、なるべく食べないようにしようとか言って、気にしている人がいるようだが、その水銀はどこから来たのかご存知だろうか。まさか化学工場の排水口から出てきたものと思っている人はおるまいと思うが、元々、天然の海水には水銀が存在しているのである。

 国立天文台が発行している2005年版の理科年表によれば、海水に存在する元素の数は、92種類である。その92種類の中に水銀(Hg)も入っているのだ。地球に存在する全海水中の水銀の総量は、2.8×105乗トン、つまり28万トンと理科年表に記載されている。

 海水の中に水銀が存在している以上、その中で生きている魚介類や海藻の中に水銀が含まれているのは当然ではないか。一切水銀を含んでいない魚がいたら、寧ろ、その方が気味が悪いくらいである。また、食物連鎖の頂点いる様なマグロやカジキの水銀濃度が高くなるのも当然である。しかし、はっきり言ってマグロに含まれてる程度の水銀など一切気にする必要ないと思う。

 水俣病水銀説の過剰なプロパガンダの所為で、有機、無機に限らず、水銀というものがペストやコレラ、プルトニウムやダイオキシンなど様な恐ろしいもの、そして水銀を使う事が罪悪であるという様な印象を大衆の頭にすり込んで仕舞っている。

 水銀(無機)という物質は、常温で溶ける唯一の金属である。この金属の特質を生かせば、水銀灯(2020年末製造禁止になった)以外にも人類にとって有益なものがたくさん作れるはずである。

 水俣病発生当時の農薬の成分の一つに、水銀の他にタリウムが使われていたが、当初予想されていた様に、このタリウムが水俣病の原因である可能性もある。このタリウムという物質は、皮膚から吸収されやすく、筋痛症を引き起こす事から、イタイイタイ病の原因物質である可能性も否定できない。

 兎に角、水俣病は有機水銀による慢性の中毒ではなく、農薬による急性の中毒である可能性が非常に高いにもかかわらず、検証もされず、今も放置されたままなのである。

 2023/10/8    

 

          反公害キャンペーンという名の国家破壊活動に狂奔する

日本の極左マスコミや極左学者に対して、徹底的に抵抗

された戦士、桶谷繁雄氏に感謝する。

 

アクセスカウンター
inserted by FC2 system